アロマ辞郎物語

アルマジロ
 
【パ】パンデミック pandemic
感染症の世界的な大流行のこと。日本語では「感染爆発」や「汎発流行」といいます。歴史に残るパンデミックには、14世紀ヨーロッパを襲った黒死病(ペスト)、19世紀から20世紀に世界各地で7回発生したコレラ、そして1918年から翌年に発生したインフルエンザ、通称「スペイン風邪」があります。
これは第1次大戦の中立国だったスペインから情報が世界に発信されたためそう呼ばれたもので、実態はインフルエンザ。人が免疫を持っていない新型のウイルスで、しかも毒性が強かったことから、世界中で3000万〜4500万人が死亡。日本でも39万人(一説では45万人)が亡くなりました。これは関東大震災による死者数のおよそ3倍に相当します。
新型インフルエンザは、「スペイン風邪」以後も、1957年に「アジア風邪」、1968年に「香港風邪」そして1977年には「ソ連風邪」と呼ばれるパンデミックを引き起こしました。40年ごと、または10年ごとにインフルエンザによるパンデミックが起こってきたと見ることもできます。
ヒトが罹るインフルエンザの大半は、もともと鳥が感染する鳥インフルエンザのウイルスが変異し、ヒトの体内で増殖し、ヒトからヒトに感染するようになったもの。
長い生物進化の歴史の中で、インフルエンザのウイルスは、群れとなって生息し、また長距離の渡りをする鳥に取りつくことが、種の繁栄(勢力拡大)のためには最良の選択だったはず。ところが、最近になって、鳥と同じくらい過密な状態で生活し、しかもさかんに移動する生き物(つまりヒト)の存在に、ウイルスは気づいてしまったようです。
次のパンデミック到来が恐れられているのは、飛行機を初めとする交通機関の発達で、ヒトの移動がかつてないほど活発になり、大都市の人口集中、しかも衛生状態の悪いスラムが増大しているため。感染の拡大を促す悪条件は、スペイン・インフルエンザ流行の頃を上回っています。
現在、鳥インフルエンザウイルスの中でも強毒性(高病原性)のH5N1型が注目されているのは、鳥だけでなく鳥からヒトへ、そして一部ヒトからヒトに感染し始めているからです。さらに変異が進み、ヒト・インフルエンザウイルスとなって感染が広がり始めた場合、それがスペイン・インフルエンザウイルス並の毒性を備えていたとすると、最悪、全世界で億単位の人命が失われるとの試算もあります。


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【ア】アロマ aroma
よい香り、芳香の意味。このアロマという言葉が、多くの日本人に知られるようになったきっかけは、流行歌「コーヒールンバ」。*西田佐知子が1961年(昭和36年)に放ったヒット曲ですが、もともと南米ベネズエラの曲。「昔アラブの偉いお坊さんが」で始まり、「南の国の情熱のアロマ」と唄います。ただし、原曲のスペイン語の歌詞に、アロマに該当する言葉はありません。アロマを発するコーヒーは、原産地(近く)のアラブでは、カルダモンやローズウォーターを加えて飲まれていることからも分かるように、もともと芳香効果を期待された飲料のようです。アロマテラピーが広まった現在、アロマという言葉からコーヒーの香りを連想する人は少数派になっているかもしれません。「コーヒールンバ」から荻野目洋子や井上陽水を連想する人が多くなっているように。
*西田佐知子=「アカシアの雨がやむ時」でレコード大賞。二世俳優・関口宏と結婚して芸能界を引退。

【イ】インサイダー insider
飛行機に乗るとき「窓側ですか、通路側ですか」と聞かれます。英語なら「ウィンドー、オア、アイル(Aisle Seat)」ですが、外が見えるほう取るか、トイレへの行きやすさを取るか、なかなか難しい選択。
では、外側(アウトサイド)と内側(インサイド)は、どうでしょう。人それぞれ、好きずきですが、日本の社会は、とくに内側の人(インサイダー)たちに都合よくできています。長い鎖国の影響か、それとも元来が内向きなのか。何かにつけて、「ウチ」と「ソト=ヨソ」を意識し、区別しがちです。
インサイダー取引とは、株式相場に関する重要な内部情報を知って取引し大儲けすること。これはアメリカが本場。昔は高級料亭の奥座敷などで語らうのが日本型のインサイダー取引でしたが、近ごろは、六本木の高層ビルに集うお仲間がつるんで、「新しさ」を振りまきながら、古典的な手法の売り抜けで巨富を得ています。

【イ】インセンス incense
お香のことです。ある場所を芳香で満たすものためのもの。香炉は英語でインセンス・バーナー(incense burner)。お愛想、お世辞の意味にも使います。そしてもう一つ別の意味が、「ひどく怒らせる」。怒りの気持ちを焚きつけるということでしょうか。日本語でも「煽(あお)る」という言葉があります。

【イ】インア(ナ)センス  in a sense
テレビ文化人がよく使う「ある意味で……」という言葉は、この英語の直訳ではないかと思っています。「これは、ある意味で犯罪ですよね」「彼女も、ある意味で美人です」。その「ある意味」が「どんな意味」かを説明するのがお役目と思うのですが、聞いたことがありません。たぶん、言ってる本人もよく分からないのでしょう。「ある意味で」と言われてなんとなく分かったつもりになる受け手こそ、ナンセンス(nonsense=バカ)というもの。まんまと煙に巻かれているのです。in a senseは、「ある程度まで」と訳するのがより適切と思いますが、煙のようにつかみ所のない、曖昧語には違いありません。

【オ】オーガニック organic(英)
近ごろ巷(ちまた)で流行(はや)るもの、○○コーヒー、○○チョコレート、○○コットン、○○フード、○○化粧品、○○シャンプー、○○カフェ、○○レストラン、○○ショップ、○○スーパー(マーケット)……
○○に入る言葉は「オーガニック」です。
「手作り」と同じように、オーガニックが頭についていると、なにやら高品質で高級そうな気がしてくるという人も多いのではないでしょうか。
オーガニックという単語には、およそ次の4つの意味があります。
(1)有機体の
(2)化学肥料や農薬を使用しない野菜や、無添加物の食料品など
(3)本質的な・根本的な
(4)生き方が簡素で自然な
今ではもっぱら(2)の「有機農産物」の意味で使われています。
似た言葉にナチュラル(natural)があり、ナチュラルフードは自然食品のことですが、自然食品=オーガニック食品という混同も、しばしば見られます。
日本の農林水産省は1992年に「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」を制定し、《化学的に合成された肥料および農薬を避けることを基本として、種まきまたは植付け前2年以上(多年生作物では、最初の収穫の3年前)の期間、堆肥などによる土づくりを実施した圃場(ほじょう)で生産された農産物》と定めました。
その当時は、法的拘束力を持たなかったので、この定義に当てはまらないのに「有機減農薬栽培」などと表示していたものもあったため、2000年に日本農林規格 (JAS) は改正されました。現在では、農産物に関しては有機農産物またはそれに類似した表示をするには、農林水産省の登録を受けた第三者機関(登録認証機関)の審査に合格することが必要となっています。

(有機JASマーク)

オーガニックと称することができる基準は、国や地域によって異なります。
たとえばアメリカでは、抗生物質・ホルモン剤を使用せず生産された畜産物も「オーガニック」と表示されます。
ヨーロッパは、これまでオーガニックと称することが許される農産物には厳しい基準を設けてきましたが、すべての作物をオーガニック栽培していた農家が、非オーガニックの作物を同時に栽培することも許されるようになったり、95%がオーガニック原料であれば、残り5%に遺伝子操作の原料が入ってもオーガニックと称することが許されるなど、基準緩和の動きも見られます。

【オ】お節
節(せち)に作る料理がお節料理。今では主に正月料理を指します。節は時節、季節のこと。節句は、もともと節供と書き、節日の供え物を意味し、転じて節日そのものを意味するようになりまいた。元日(1月1日)は、一年で最初の、いちばん大切な節日です。(元旦は本来「元日の朝」の意味)
ところで、なぜ「お節」の場合は、節を「せつ」ではなく「せち」と読むのでしょう。
中国から伝わった漢字(そして漢語=古代中国語)の「節」(現代語ではjie)は、古代日本人の耳には「セッ(set)」と聞こえたようで、しかしうまく発音できないため、語尾に「u」をつけたり、「i」をつけて発音しました。
同じように日本式発音(音読み)にした漢字はたんさんあります。たとえば律は現代中国語で「lu」ですが、古代日本人には「リッ(lit)」と聞こえたのでしょう。これも言いにくいので、「i」をつけたリチ(たとえば律儀)、「u」をつけたリツ(たとえば法律)の発音が生まれました。時代がぐっと下がって、漢語ではなく英語のinkに「i」をつけたインキ、そして「u」をつけたインクという日本語が生まれましたが、これも同じクセによるものです。ケーキとケーク、ストライキとストライクの例もあります。(07.01.01)
*参考:『漢字と日本人』(文春新書)
クリスマス・ケーキのあとは、お節(せち)料理を楽しむのが日本人です。


(中華風お節料理。中国にもあるのでしょうか)

【キ】キャリア  @career Acarrier
以前は@、経歴や職業の意味で使うことが主でした。
「この道10年のキャリアの持ち主」、「彼女はキャリアウーマンだ」、「もっとキャリア積まなくっちゃ」。
最近では、上級試験に合格して中央省庁に入った国家公務員幹部(または幹部候補)をキャリア、それ以外の一般職員をノンキャリ(ノンキャリ)と呼ぶことも広く知られるようになりました。キャリア官僚の不祥事、悪だくみなどが次々にバレて、テレビや新聞で報じられることが多くなったせいでしょうか。また民間会社では「キャリア採用」という言葉を軽〜い感じで使っています。

近ごろ急増しているのはA、運搬者(運び役)の意味の使い方。キャリアーやキャリヤーと語尾を延ばすのではなく、@と同じ発音・表記で使われることが多いようです。
◎細菌やウイルスに感染した保菌者、まだ発症していない感染者、遺伝子を持っていて未発症の保因者。
◎運輸会社 とくに航空会社。一国を代表する航空会社は国旗を機体に表示したことから、ナショナル・フラッグ・キャリアと呼びます。
◎通信会社 「あなたのケータイ、キャリアーはどこ?」
◎運搬具一般 自動車の屋根に設置するルーフキャリア。スキー専用ならスキーキャリア。赤ちゃんを背中に密着させず運ぶ器具がベビーキャリア。
*英語のキャリアバッグcarrier bagは、日本でいう手提げのヒモがついた厚めの紙袋のことです。
◎精油(エッセンシャルオイル)を薄めて肌に効果的に行き渡らせるオイルをキャリアオイルcarrier oilと呼びます。ベースオイルbase oilの別名です。
ホホバ、グレープシード、スウィートアーモンド、アボカド、ツバキ、オリーブなどから作られるキャリアオイルは、精油を運ぶだけでなく、それ自体が多くの優れた効能を持っています。

【ク】クリームバス Cream Bath
■髪と頭皮と全身効果
薬効成分を含んだクリームで頭髪に栄養を与え、毛根から健やかにするとともに、頭部から首、肩にかけてほどよく刺激し、全身のリラックス効果を生むトリートメントのことです。
頭皮の改善、髪質の改善、アロマによる心身状態の改善が同時に果たせるのが特色で、頭部や首には足裏と同じように内臓の反射区やツボが密集しているため、肩のこりや目の疲れの解消のほか、高い全身効果も期待できます。
■世界の恵みを含んだクリーム
クリームに含まれる成分は、アロエ、アボカド、ジンセン(朝鮮人参)など。クリームバスはもともと、インドネシアのバリ島に古くから伝わる民間療法ですが、アロエはアフリカ・地中海、アボカドはメキシコ・中米、朝鮮人参は中国東北・朝鮮半島北部が原産地といわれていますから、世界の恵み、世界各地の民族の知恵が詰まっているといえそうです。
インドネシアは、マレー系民族を中心に形成されていますが、その国名が示すとおり、約2000年前から、インド文明の強い影響を受けてきました。それは、バリ島やジャワ中部のボロブドールの風俗や遺跡からも明らかです。
(アロエ)
ところで、日本では洗髪の意味で使われるシャンプーshampooという言葉。これは英語になっていますが、もともとはインドのヒンドゥー語。「押す」「もむ」という意味があります。髪よりも、その土台になっている頭皮(地肌)を清潔に、健康にするのがシャンプーの本来の意味かも知れません。
(アボカド)

(ジンセン)


【ココンシェルジュ concierge(仏)
ビジネスホテルやカプセルホテル、そして高速道路のインターチェンジ近くなどに派手派手しく聳えているホテルでは、ついぞ見かけませんが、★(星)が4つも5つもついている高級ホテルでは、シャンデリアにも増して欠かせないものが、このコンシェルジュ。スマートな物腰で、コンサートや芝居のチケットを手配し、小旅行のアレンジなどを引き受けます。
コンシェルジュはフランス語で、門番や、アパートの鍵を預かる管理人の意味で使われていました。
そしてホテルとは親戚関係にあるホスピタル(病院)でも、利用者の「お世話係」の専門職が登場しています。その名も「医療コンシェルジュ」。診療や検査の予約、待ち時間の確認、家族や病院との連絡から、セカンドオピニオンの手配、病院や医師の選定まで、患者に代わっておこないます。欧米では着実に利用が進んでいますが、日本でもつい最近、名古屋大学病院で運用が始まりました。(今のところ、サービス対象は、開業医の紹介状を持った初診者だけ)
お世話、お助けが必要という点では、ホテルよりも病院のほうがずっと切実。病院がますます「サービ業」を意識するようになれば、これは欠かせない(サービス)存在になりそうです。医師と患者、病院と地域と患者との最適な関係を作り上げ、患者の満足度をいかに高めることができるか。新しいサービス職種である医療コンシェルジュへの期待は、高まっています。(06.09)

【サ】桜の香り
爽やかに甘く、しかも和風な香りと感じるのは、「桜餅」や「桜湯」の香りとして記憶されているせいかもしれません。
その桜の香りは、葉の香りであって、しかも生(なま)の状態ではなく、半乾きや塩漬けにされた葉から発せられるといわれます。
ところが、前日に降った雪を幹の上に残し、花の蕾もまだ固そうな桜の木の下で、たしかにあの香りを感じたのでした。すがすがしい桜葉の香りです。
あれは、足下に積み重なって半ば土と化していた、桜の落ち葉(枯葉)から立ち上ってきたものだったのでしょうか。

桜(葉)の香りの主成分は、クマリン(coumarin)という有機化合物です。ほかに、アーモンドや杏仁豆腐の香りの成分でもあるベンズアルデヒド、バラの花びらの香り成分であるベータ・フェニルエチルアルコールなども含まれています。
これらの芳香成分には、気持ちを穏やかにさせる効果があると認められています。
クマリンは、化学式ではC(炭素)9、H(水素)6、O(酸素)2で表され、以前はトンカ豆という植物の種子から抽出されていました。19世紀後半に化学的合成法が確立し、クマリンは人工香料の先駆けとなり、また現在は軽油識別剤としても使われています。
ディーゼルエンジンを搭載した自動車は、ガソリンではなく軽油が燃料ですが、そのディーゼル用軽油に、A重油や灯油をある程度混ぜてもディーゼルエンジンは問題なく動きます。しかし、いま注目のガソリン税に相当する軽油取引税がA重油や灯油に課せられていません。このため、A重油や灯油を混ぜたディーゼル燃料は、税金逃れの「不正軽油」というわけです。
この「不正=脱税」を防ぐため、A重油や灯油には一定濃度(1ppm)のクマリンが添加されています。タマリン入りのA重油や灯油を軽油に混ぜると、分析装置でたちまち悪事露見という仕掛け。これは1991年から行われているものですが、軽油取引税など課さなければ、わざわざクマリンを持ち出す(添加する)必要もないはず。

【シ】シアバター shea butter
(1)――その木どんな木、気になる木
肌の保湿と保護、鎮静、老化防止などの効果が高く、近年欧米諸国でも注目を集めているシアバターは、アフリカ原産のシアの木の実から取った天然植物性油脂です。産地では遠い昔から食用、保健用、医療用などに使われてきました。
カリテとも呼ばれるシアの木は、アカテツ科の常緑高木。学名はButyrospermum parkiiです。西アフリカから中央アフリカにかけての北緯5〜15度のサバンナ地帯に自生するため、一帯はシアベルトとも呼ばれます。ラリーで有名なダカールのある大西洋に面したセネガルからマリ、ブルキナファソ、ガーナ、トーゴ、ナイジェリアそして内陸国のチャドにかけての地域です。

(シアの木の生育地帯)
成長すると樹高は25メートルにもなり、実をつけるまでに20年から25年もかかりますが、その後は200年にわたって実をつけるという、まさにアフリカ的なスケールを備えた大木です。
 
(左:シアの木の実 右:種子と粗製シアバター)
果実は5〜8センチのビワに似た卵形で、薄い果肉はアボカドのような濃厚な味わいとか。シアバターがとれる種子はウズラの卵ほど。殻を割ると仁(シアカーネル)が現れます。
4月〜8月の早朝、熟して落ちたシアの実を拾い、それを洗って圧搾、煮沸、抽出し、シアバターに仕上げるのは、すべて女性の仕事。シアバターによって得られる収入はすべて女性のものという決まりもあります。古来シアが「女性の宝」と呼ばれているのは、しかし、そのことだけが理由ではないようです。

【シ】シアバター shea butter
(2)――その実どんな実、身(美)になる実
女性が収穫し、そして作り出すシアバターは、調理用、灯火用など、生活を支える油脂としても使われますが、女性の出産直後には、傷んだ母体、女性特有の器官を癒すために塗られます。
日常的には、アフリカ低緯度地帯の強烈な太陽光線(紫外線)から女性の肌や髪を守るために用いられています。シアバターは、まさに女性の美容と健康のための黄金クリームです。
地域です。
(シアの木の生育地帯)
アフリカの産地では古来から生活の知恵として受け継がれ愛用されきたシアバターの特性が、最新科学によって明らかになりました。植物油脂にはめずらしくオレイン酸やリノール酸といった不飽和脂肪酸を多く含み、またビタミンAやEの働きで、肌の柔軟・保湿作用、抗酸化作用などを備えているのです。
遠いアフリカから日本にもやってきた美容と保健の黄金クリーム、それがシアバターですが、実は、以前から私たちの口に入っていた可能性があります。シアバターは、カカオバターの代用として広く用いられてきました。カカオ純度の高いチョコレートが現在のように広く出回る前には、それと知らずにシアバターを食べていたはずです。
(左:シアの木の実 右:種子と粗製シアバター)
カカオの世界的な大産地は、コートジボアール(1位)、ガーナ(2位)、ナイジェリア(4位)などの西アフリカの諸国で、これはシアの産地とぴったり重なります。しかしカカオの原産地はメキシコ南部から中米グアテマラの一帯。近代になってから、欧米の強国がカカオを国際商品として大規模に生産するため、アフリカに持ち込んだのです。シアの実こそ、正真正銘のアフリカが生み出した黄金の恵みといえるでしょう。

【シシャンプー shampoo(英)
洗髪用の液剤を指すだけでなく、シャンプーを使って洗髪することも「シャンプーする」といいます。液剤で洗うという意味から、ボディシャンプー、カーシャンプー、ペットシャンプーなどの言い方もあります。このように、シャンプーと液剤との結びつきが強いためか、「石鹸シャンプー」と呼ばれる洗髪剤が存在します。
ところで、英語にもなっているこの言葉は、もともとインドのヒンドゥー語。「押す」そして「マッサージする」が本来の意味です。髪を洗うのではなく、頭皮をマッサージすることが、シャンプーの「本質」のようです。前回のクリームバスを思い出してください。インド文明の強い影響を受けているインドネシアのバリ島でクリームバスの液剤が作られているのは合点がいきます。
日本でシャンプーという言葉が一般に知られるようになったのは昭和初期。昭和7年(1932年)に「花王シャンプー」が発売されています。そして、粉末シャンプーの「花王フェザーシャンプー」は昭和30年(1955年)の登場。
日本が戦時体制に突き進み、敗戦、そして戦後の復興が一段落するまで、多くの日本人はシャンプーどころではなかったようです。

【ジ】人口ピラミッド(population pyramid)
国など、ある地域の、ある時点での人口を、0歳を底辺として上下に年齢別、左右に男女を分けて並べた図。これによって人口構成を視覚的に確認することができます。もしも出生率と死亡率が、長期にわたってほぼ一定にに維持されている社会では、0歳児の人口がいちばん多く、年齢が上がるに従って徐々に減少するため、ほぼ逆三角形つまりピラミッド型になるところから、この名があります。
ところが日本のような少子高齢(子どもの数が少ないのを「少子」というのは変です。むしろ少産)社会では、人口構成は深海魚の開きか、骨が張り出した奴凧、いずれにしもて不気味な形になります。不気味と感じるのは、もちろん先入観のため。
12月20日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した2055年の推計人口は1億を大きく割り込み8993万で、形はごらんのようなポン・キュ・パッのナイスバディ型……なんて喜んではいられません。多老少若(これも変?)の「じっちゃんばっちゃばっかり社会」です。
しかも、同研究所の推計は、2055年も現在と同じ出生率(1.26)で計算。実際には、もっと上が重くて、下がか細いメタボリック型はたまたベーゴマ型になりそう。
それまでに、日本の「ピラミッド」が倒壊しれなければ、の話なのですが。

不気味な人口非ピラミッド

かつて栄えたマヤ文明のピラミッド

【セ】セージ common sage(英)
スカボローの市(いち)に行くんだったら、
パセリ、セージ、ローズマリーとタイムを買ってきてね、と頼んでいるのかと思ったら、そうではなくて、「あそこに住んでいる人によろしく伝えてほしい。かつて私が真剣に愛した人に」というのが歌詞の意味。
アメリカ東部出身のフォークデュオ、サイモンとガーファンクルが1960年代に放ったヒット曲の一つ『スカボローフェア』では、「パセリ、セージ、ローズマリー アンド タイム」のフレーズが繰り返し登場します。この曲はもともと英国イングランドの民謡で、民謡にはよくある合いの手、古くからのまじないことばのようです。パセリ、セージ、ローズマリー、タイムは、どれも薬効のある植物なので、これを唱えれば悪いもの(気)が払われるという習俗なのでしょう。
この曲が流行した1960年代後半の日本では、パセリはまだしも、セージやローズマリーやタイムを知る人は、まだ少なかったはずです。
セージの学名はSalvia officinalis。地中海沿岸地域が原産地で、紫蘇(しそ)科の多年草または常緑低木。学名にもあるとおりサルビアの仲間です。セージの日本名は「ヤクヨウサルビア」で、日本で赤い花が愛好されているサルビアのまたの名が「スカーレット・セージ」。花の色からチェリー・セージと呼ばれる観賞用花卉もあります。
もともとラテン語のsalvareは治療、salveoは健康の意味です。セージは古代ギリシャやローマの時代から強壮剤やうがい薬として使われていて、中国から茶が輸入されるまでは、セージを煎じて飲んでいました。セージは中国に運ばれると茶の3倍の価値で取引されたといいます。
各地で広く栽培されていますが、名産地はトルコ、アルバニアなど。

【北米カリフォルニア産の乾燥ホワイトセージ(Salvia Apiana)。先住民アメリカインディアンは昔から香として焚きます】
セージのスパイス利用は16世紀頃から。肉やレバー、魚の臭い消しや防腐剤に使われ、とくに豚肉とは相性がよく、ソーセージの語源になったとの説もあります。ハーブとしては、鎮静、消炎、解毒などの効果が高く、その仲間のクラリセージも、鎮静、うつ払い、覚醒、鎮痛などに効果があるハーブとして利用されています。

【テ】帝王切開 caesarean section(英)
時節がら畏れ多くもお節介なテーマですが、おせっかいでなく「帝王切開」といえば、腹部切開によって胎児を取り上げること。これはラテン語で腹部切開分娩を意味するsectio caesareaを翻訳するとき、スペルが似ている古代ローマの英雄カエサル(Caesar)と取り違えた、しかも当のユリウス・カエサル(英語名:ジュリアス・シーザー)が、母親の腹部切開で出生したという伝説があった――というのが、こんにち比較的よく知られている「トリビアその1」です。
ところが、カエサルの実母は長生きしていて、当時(2000年以上昔)の腹部切開分娩が「母親の命と引き替えに胎児を生かす方法」だったことと矛盾します。つまり、カエサルは帝王切開で生まれのではなかった。
それよりも、、カエサルにはもともと「切る、分ける」の意味があって、ユリウス・カエサルとは「ユリウス家の分家」の意味。軍人からのし上がった彼は、自分が名門の出だということをアピールするために、そう名乗ったようです。
そしてローマの実力者となったカエサルの名は、のちに帝王を意味する言葉ともなり、ドイツ語のKaiser(カイゼル)を生みました。
赤ちゃん誕生のおめでたい話が、とんだ方向に行ってしまいましたが、帝王切開で生まれたからといって、やがて「皇帝」になると決まったわけではありません。
ともあれ、帝王切開でも平民分娩でも、日本に赤ちゃんがふえるのは、楽しくていいですね。

【トトリアージュ triage(仏)
英語にもなっていますが、もともとフランス語。trierは英語でtry(試みる)の意味です。トリアージュは、羊毛やコーヒー豆を選別することを指し、最低ランクのコーヒー豆の別名でもありましたが、第1次大戦中にフランス軍が、戦場で負傷した兵士を選別する意味で使ってから、医療用語になりました。
負傷の程度を見て、誰を助け、誰を後回しにし、誰を見放すかという判断を下すこと。そこは戦場ですから、限られた医薬品・医療器具・医療スタッフという「資源」が、戦力保持のために、どのように使われれば最適かという観点を最重視します。いい人を先に助け、悪い人はちょっと待ってもらう、またはその逆という発想もなければ、重症者が先で軽傷者は後回しということもありません。今ここで手を施せば再び戦場に送り出せそうだという患者(負傷者)が選び出されるのです。
戦争ではなく、地震や洪水、爆発などの災害時にも、限りある救急医療の能力をどこに振り向けるかという問題が発生します。つまり、医療を施せば確実に助かり、放置すればただちに危険な状態に陥る、そういった患者を優先するのです。したがって、手を施しても助かりそうもない重傷者には諦めてもらうことになります。
ことは戦争や災害の時だけに限りません。医療は無限でも無料でもないので、トリアージュ(医療対象の選別)は常に、そしてますます求められています。「私のことはいいから、あっちを先に助けてやってくれ」という美意識が失われ、「オレがいちばん痛くて、ひどいんだ、オレから助けろ!」という世の中になれば、なおさらのこと。
的確な現場判断が求められるのがトリアージュ。その判断の厳しさから逃げようと、現場を直視し自分でもの考えることをやめて、判断先送り、その場の雰囲気、声の大きさに押されて動く。毎度お馴染み「トリアエズ」(取り敢えず)の登場です。

【バ】バブルバス babble bath
泡がブクブクの発泡風呂なら、炭酸ガス(二酸化炭素)が発生するバスソルトを作ることで簡単に楽しめます。びぃずるうむのアロマ教室でも、発泡型バスソルトの簡単な作り方をご紹介しています。

【ビ】美化語、美加語(びかご)
「なんでも“お”をつければ、いいってもんじゃないの。新香には“お”つけてもいいけど、奈良漬けにはつけちゃダメ。線香にはつけてもいいけど、沈香につけたら笑われるよ」
筆者(帆蔵)は幼き日、無学な母からそう教わりました。
敬語見直しのため文部科学省の諮問を受けた文化審議会国語分科会というグループは、従来の「尊敬語・謙譲語・丁寧語」の3分類から、謙譲語を2つに分け(謙譲T、謙譲U=丁重語)、さらに美化語を加えて5分類に改めるという指針案を、先ごろまとめたそうです。
美化語というのは、「お料理」「ご馳走」のように、頭に御(ミと読むこともある)をつける敬語法だとか。
ところで近ごろ、「御」の字ばかりか、やたらに「美」の字をつっつけた単語が行き交っています。それも体の部分に美の字をつけるのです。
美肌や美顔なら昔からあったし、美脚、美髪もだいぶ馴染んできましたが、インターネットで検索すると、美鼻、美耳、美口、美歯、美指、美爪、美胸、美乳、美背、美腹、美尻、そして美臍という単語まで、主に営業用として使われていることがうかがえます。中には、どう読むのか見当がつかないものもあります。『「美しい」の国』って、このような状況をいうのでしょうか。
なお、「美しい静岡県東部地区」を「美伊豆」(びいず)というのかどうか、まだ確かめておりません。

【フ】ファンゴセラピー fangotherapy(英)
泥療法のことです。ファンゴはラテン語で泥、イタリア語では火山灰の意味。イタリアで「ファンギfnaghi」といえば泥温泉を指しますが、英語になっているファンゴfangoは、「リウマチなどの治療に用いるイタリア産の温泉泥」のこと。
最近、ふるさとに帰国した大相撲横綱が、内陸の大草原国にも泥温泉療法があることを、さらに、現地に30数時間滞在しただけの横綱のお師匠が、泥温泉に「お肌つるつる」効果が高いことを、多くの日本人に教えてくれました。
ファンゴセラピーは、けっしてタラソテラピー(海洋療法)の1ジャンルではなく、温泉泥系や火山灰系もあるのです。
泥に含まれるミネラル分は、海水の10倍以上ともいわれ、さらに比重の大きな泥の浸透圧、温湿布または冷湿布に相当する効果が、傷みをやわらげ、肌質を改善するようです。
イタリアのベネチア近くにあるファンギ(泥温泉)で泥パックを体験した人の話では、初めは熱く、重く、痛いほどの泥の圧迫を感じ、次に自分の身体から、汗というより脂(豚にたとえればラード、牛ならヘット)のような粘液が染み出してきて、全身ぬるぬるになる、それと同時に泥の成分が体内に染みこんで行くようで、身体が軽く、肌がつるつるスベスベになる、とのことです。

(南カリフォルニアの泥温泉「グレンアイビー」のパンフレットより)
泥は、地球が長い年月をかけて作り出した天然ブレンド。さまざまな成分が練り合わさったもので、たとえば海洋系ファンゴの場合、海岸から20〜50メートルの浅い海底から取った泥は、動植物の沈殿物が主成分、一方、深さ数百メートルの海底から取った泥は主に甲殻類の沈殿物で、それぞれに異なる効果を持っています。
香りのアロマテラピーと同じように、泥のファンゴテラピーも、目的に合わせた多様な使い方が可能です。

【ホホースセラピー horse therapy(英)
直訳すると馬療養。
馬と接することで、心身を癒すという考え方です。
馬券(勝ち馬投票券)を当てて、それも倍率の高い「万馬券」によって、経済的難局を一気に打開しようという考え方とは、だいぶ違います。
2006年10月29日(日)千葉県勝浦市の「勝浦ブルーベリーヒルズ」で開かれた安西美穂子さん主催「ホースセラピー開校記念パーティ」に行ってきました。
写真の馬は、7歳馬のマチャル号。
馬のマッサージポイントを教えて貰って、あごの下を撫でてみましたが、ご覧のように、「もっと」とねだられた気がしました。
馬の温かさと優しさを存分に感じられるひとときでした。

【ミ】ミルクバス milk bath
憧れの牛乳風呂です。でも、これはやっぱり檜の浴槽ではなく、猫足のバスタブじゃないと似合いません。ちなみに、粉末の「温泉の素」でつくる、乳白色の湯は、無機チタンという成分によって白濁させています。本物の牛乳を使ったら湯がすぐに腐ってしまうそうです。

【モ】モラルハザード moral hazard
近ごろ、「倫理の欠如」「道徳の崩壊」の意味で盛んに使われますが、これは間違い。もともとは保険業界の専門用語で、危機に対する備えを整えたことで、かえって危機を回避する努力を怠ってしまう状態のこと。車両保険に入っているから、自動車をぶつけたって構わないと荒っぽい運転をすることなどは、保険を支払う会社に取っては重大な危険で、まさにモラルハザード。保険会社が損するだけで自分は得するという発想。しかしまわりまわって(保険料が高くなるなど)やがて当事者にも、社会全体にも損失を生み出します。「毎日アロマトリートメントしているのだから、深酒、喫煙、夜更かしも許される」と思うのは、間違いなく自分自身に実害が返ってくるモラルハザードです。

【ヨ】四文字熟語
日本でいちばん有名な四文字熟語は「焼肉定食」かどうかは分かりませんが、なぜ日本人は四文字熟語が好きなのでしょうか。意味がよく分からなくても、なにか格好がついたような気になって、安心できるせいかもしれません。

先日、南関東の由緒ある神社(写真)に行くと、祈願の例として、次のような四文字熟語が列記されていました。
家内安全 商売繁盛 厄除開運 交通安全 身体安全 心願成就 除災招福 病気平癒 合格祈願 学業成就 就職祈願 必勝祈願 旅行安全 社内安全 良縁成就 事業繁栄 海上安全 大漁祈願 安産祈願 五穀豊穣 天下太平 神恩感謝
……なんとなく、ありがたい気持ちになりませんか。
天下は太平より「泰平」ではないかと思うのですが、まあ、いいでしょう。五穀豊穣より海上安全や大漁祈願が先にあるのは、この神社が多くの漁港を擁する海沿いの町にあるせいだと思います。


四文字熟語は、漢字の本場中国でも盛んに使われているようです。たとえば「文明乗車」。バス乗り場や地下鉄駅そして車内によく掲げられている標語で、「降りる客が先で、乗る人はあと」「割り込みしないで順序よく」の意味。この場合の文明はカステラではなくマナーを指しています。
中国でこの標語がすっかり定着しているのは、強引乗車や我先乗車が横行し、譲り合いが一向におこなわれないせいでしょう。
化粧、飲食、ゲーム、音漏らし、咳、くしゃみ、無断接触(痴漢行為)などが横行する日本の車内も、文明が行き渡っているとは、とても言えません。(2007.1)



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